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誰でもできる!? 経筋治療について篠原昭二先生にインタビューしました!

公開日:2022年12月13日

「鍼ってどうして効くのだろうか?」
誰にでもできて、非常に軽微で痛みがなく、刺鍼直後に変化が見られる「経筋治療」。篠原昭二先生の長年の経筋研究の軌跡と経筋治療の魅力が凝縮された書籍、その名も「誰でもできる経筋治療」(著 篠原昭二)は、2005年刊行以来、ロングセラーとなっており、このたび11刷の重版を行いました!

外来で多くの臨床実績をあげてきた篠原先生が、古典の内に眠っていたスタンダードな治療法を、紆余曲折を経て探りあて、カンタンかつ確実で効果的な鍼治療として復活。本書では、運動器愁訴がダイナミックに変化する事実を体験し、経筋、経絡の不思議を実感することができる経筋治療について、わかりやすく解説しています。
その「経筋治療」について、

 ・ 経筋治療とは?
 ・ 本当に誰でもできるの?
 ・ 軽微な刺激でダイナミックに変化する事実を体験って?
 
との皆様の声にお応えして、篠原昭二先生にインタビューしました!

書籍『誰でもできる経筋治療』について

「古来、運動器系愁訴は経筋病と考えられて診断・治療されてきたと思われる。しかし、今日、運動器系愁訴が鍼灸治療の好適応でありながら、純粋に経筋を応用した報告は非常に少ないのが現状であり、その有用性や臨床的価値についてはほとんど知られていない。」

篠原先生がそのように考え、『黄帝内経』に記述された経筋の概念、流注、経筋病の特徴から、経筋を応用した鍼灸治療方法について、約27年間の軌跡を集約し、わかりやすく解説的に紹介している書籍です。

経筋は、経絡学説の深義を理解するための入り口であり、本書は、疼痛部位を通過する経筋上の末梢の滎穴や兪穴などの経穴への非常に軽微な刺激で、運動器愁訴(動作時のつっぱり、ひきつり、痛みなど)がダイナミックに変化する事実を体験し、経筋、経絡の不思議を実感することへと導く1冊です。

篠原先生が自らの臨床経験をもとに作成した当書籍のイラストは、教科書にも引用されています。多くの症例も掲載されているので、授業をより理解するため、さらには、1本の鍼が導き出す変化の魅力を知るための指南書として学生の方へもおすすめです!

篠原昭二先生のご紹介

1956年、愛媛県生まれ。龍谷大学法学部卒業。明治鍼灸柔道整復専門学校(夜間部)卒業後、専任教員となる。1980年に明治鍼灸短期大学・助手、87年に明治鍼灸大学・講師となり、90年に助教授に就任。2001年経筋治療の臨床研究により鍼灸学の博士号を取得し、03年に明治鍼灸大学(現:明治国際医療大学)・大学院教授となる。14年に退職後、九州看護福祉大学鍼灸スポーツ学科教授に就任し、現在に至る。

全日本鍼灸学会理事、監事(〜16年)、日本伝統鍼灸学会副会長・日本東洋医学会鍼灸学術委員長(〜R2年)、日本中医学会理事、日本統合医療学会・認定師:鍼灸。明治国際医療大学付属鍼灸センターならびに九州看護福祉大学鍼灸臨床センター外来で臨床実績を上げ、その成果を学会等で多数発表している。

篠原昭二先生にインタビューしました

――長きにわたり大好評の本書籍ですが、改めて、経筋治療についての書籍を出版された際の経緯を教えてください。

篠原 「誰でもできる経筋治療」のp2、p4で記述しましたが、風寒の邪によって生じた肩関節の挙上時痛が列欠への刺鍼でみごとに改善したり、膝の関節水腫が内庭への刺鍼で1週間後には全く消失していたり、鍼治療はこんなにも劇的に効果があるのか!といった経験をしていく過程で、「鍼治療の効果はすごい!末梢のツボ刺激であるにもかかわらず、即効性がある!」といった感想を持つようになりました。

多くの鍼灸家で、こういった感想を持ちうる臨床家はどれ位居るでしょうか?局所治療をすれば、誰がやってもそれなりの直後効果は期待できるかもしれません。しかし、疼痛部位と関係しない、末梢のツボへの軽微な刺激が実は思いもよらぬ鎮痛効果を発揮することを理解、認識できる臨床家は少ないのではないかと思われます。この不思議で素晴らしい経絡という診断•治療システムとの出会いを、是非とも鍼灸を学ぶ人たちにも知識を共有できればと考えた次第です。

――ずばり、経筋治療とはどのような治療でしょうか?

経絡は経脈と絡脈から構成され、さらに経脈には①正経12経脈(霊枢経脈篇第十)、②12経別(霊枢経別篇第十一)、③十二経筋(霊枢経筋篇第十三)、④六経皮部(素問皮部論篇第五十六)、⑤奇経八脈がありますが、このうち、③十二経筋は、体を動かした時のつっぱり感、引き攣り、動作時痛、麻痺といった運動器系愁訴を主るものであり、霊枢には経筋の流注部位、愁訴、治療法(痛む部位への燔針劫刺:焼き針で速刺速抜)が記述されています。

素問・霊枢の時代から、経脈の病証、経筋の病証、皮膚の病症等が区分されていたことがわかります。経筋治療は運動器系の主として動作時痛を対象とする診断•治療システムであるといえます。

――経筋治療が、特に効果を出せる(得意な)疾患や状況などありましたら教えてください。

篠原 経筋治療は、運動動作時におけるつっぱり感、引きつり感、痛みが対象となります。麻痺に対しては即効性を期待することは難しいですが、経筋の流注が明確である、四肢および頸部の動作時痛に対しては即効性が期待できます。

したがって、具体的には、股関節痛、膝関節痛、足関節痛、肩関節痛、肘関節痛、手関節痛、頸部の寝違い、顎関節症といった愁訴に対して即効性が大きく期待されます。

――篠原先生の現在の治療の組み立てを教えてください。

篠原 四診法を通して①臓腑病、②経脈病、③経筋病を判断して、臓腑病に対しては気血津液の虚実・寒熱の調整を図ると共に、兪募穴、合穴、絡穴、郄穴等の反応の顕著な穴への治療を行なっています。経脈病に対しては異常経脈を明確にした上で、五行穴の反応の顕著な穴への治療を行なっています。

経筋病に対しては、異常経筋上の滎穴、兪穴の反応の顕著な穴への治療を行なっています。これは、遅発性筋痛及び臨床研究を通して、経筋病であれば該当する経筋上の末梢の滎穴や兪穴に高頻度に圧痛点が出現することが明らかになったことからです。

霊枢経筋篇では「以痛爲腧(痛むところがツボである)」としていますが、疼痛と関連する経筋上の末梢の滎穴や兪穴の圧痛点の探索が診断点であると同時に効果的な治療点であると考えています。

――現在行っている治療(経絡、局所、マッサージなど)に組み合わせて、経筋治療を取り入れる際に、効果的なタイミングなどはありますか?最初に、または少し全身がほぐれてから、仕上げに、など。

篠原 例えば膝関節前面の動作時痛(階段昇降時痛や起坐動作時痛)があれば、足陽明経筋病と判断できますが、単純な経筋病であれば、内庭、外・内庭、侠渓あるいは陥谷、外・陥谷、地五会もしくは足臨泣に高頻度に圧痛が観察され、圧痛点に対して何らかの刺激(貼付鍼、皮内鍼、磁気鍼、毫鍼刺激、灸刺激など何でも良い)を与えれば簡単に鎮痛することが可能です。

しかし、飲食の不摂生から生じた胃の腑の異常やストレスから肝胃不和によって生じた胃の腑の失調が原因となって経脈病、経筋病へと発展した動作時痛に対しては、経筋治療を行なっても一時的な効果であったり、今ひとつ鎮痛効果が期待できないことも多くあります。

このような場合はまず臓腑病、経脈病の治療を行なった上で、最後に残った経筋病に対する治療を加えると簡単に動作時痛を軽減することができます。

<側頸部痛治療実習の様子>
篠原 側頸部痛は三焦経、胆経、小腸経が関与するのですが、どの経絡の異常が愁訴と関連するのかを明らかにするのは簡単ではありません。

しかし、耳珠の前に位置する耳門、聴宮、聴会の圧痛の有無から簡単に異常経脈を知ることができます。

そして、これらの三つの経穴に切皮置鍼するだけで側頸部痛は治療できるのですが、その実習をやっているところです。耳珠の前にある経穴への切皮置鍼で側頸部痛が変化する体験は、学生の皆さんにとっては大きな驚きのようです。

――経筋治療を取り入れる際の注意事項がありましたら教えてください。

篠原 体を動かした時のつっぱり感、引きつり感、動作時痛が経筋病です。これに対して、安静時痛、自発痛、夜間痛、痺れ感、だるさといった愁訴は経脈病や臓腑病の範疇であり、まず、純粋に経筋病であるかどうかを明確にすることが重要です。

そして、単純な経筋病か臓腑病や経脈病から発展した経筋病かを判断することがさらに重要となります。後者の場合には臓腑病や経脈病を治療した後でないと期待した効果は得難いかすぐに再燃・再発するのが現状です。

したがって、経筋病と思って治療したけれども今ひとつ効果がないという時は、必ず背後に経脈病や臓腑病が隠されていないか(見落としていないか)どうかを再度チェックする必要があるのです。

――経筋治療を学ぶ際に必要なことやポイントなどありましたら教えてください。

篠原 経筋治療にあたっては、前述の単純な経筋病か臓腑病や経脈病から発展した経筋病であるかを明らかにすることが最も重要です。そして、流注上の滎穴や兪穴の超過敏な圧痛点を詳細に触知することが効果的な治療の決め手となります。

そのためにも、しっかり経筋の流注を理解する必要があると思っています。

――とてもわかりやすい経筋図が特徴の書籍ですが、どのような治療家に読んで頂きたいですか?

篠原 とくに、
 • 経脈や経絡といった東洋医学の理論がチンプンカンプン!
 • 経絡なんて本当にあるの?
 • 疼痛部位の局所に刺鍼しないで手足の末梢のツボ刺激で鎮痛効果など出せるはずがない!
 • 鍼治療(局所治療も未熟)で効果が期待できるなんてとても思えない!

といったことを感じたことがある方にぜひ読んでいただきたいと思っています。
経筋治療は、今までそれなりに鍼治療をやってきたけれども、これで効いた、治ったといった経験がない。このような初学者に対して是非とも実践していただきたい治療法です。

疼痛部位がどの経脈、経筋の流注上にあるのか、その末梢の滎穴や兪穴の圧痛点を探して最も顕著な圧痛点に対して、軽く切皮置鍼をしただけで、即座に動作時痛が変化したとしたなら、刺鍼した治療家本人も、疼痛部位と関係のないかけ離れた部位に刺激された患者さんも、共に、「あれ?痛くない!どうして?!」といった感動を覚えることが多いでしょう!

――篠原先生の治療の流れや鎮痛効果のポイントなどもお聞きすることができ、大変貴重な時間となしまりた。お忙しい中、とても詳しくわかりやすいご回答をありがとうございました!

いかがでしたでしょうか。誰でもできて効果を感じることができる経筋治療は、特に経絡や古典を難しいと感じている方や、鍼治療の即効性を実感したい方にとって、経絡の理解へと大きく近づく機会となる治療法の一つと言えるのではないでしょうか!『誰にでもできる。そして何よりも経絡のルートでしか説明できないこのミステリアスな現象、ぜひ、その魅力に「はまって」みてください!』(「誰でもできる経筋治療」より引用)

書籍「誰でもできる経筋治療」、DVD「誰でもできる経筋治療」はこちらから!

書籍「誰でもできる経筋治療」

著者:篠原 昭二

DVD「誰でもできる経筋治療」

出演:篠原 昭二

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