治療院の患者様からの、クレーム・ご意見対応の方法の一例ご紹介
近年、治療院の数は増え続けており、他院との比較や競争が激化してきています。それゆえ、患者様が求める対応水準も高くなり、治療内容や費用、対応など治療院に寄せられるクレームやご意見は、多種多様です。クレーム対応は一歩間違ってしまうと、さらに患者様の不満をエスカレートさせてしまうことにつながりかねません。
解決までにも多大な時間を要することになり、本来の業務に重大な支障を生じてしまいます。
そこで本記事では、昭和初期から治療院に関わってきた医道の日本社が、クレームが発生する原因や未然に防ぐ方法をご紹介します。
本記事は、すべてのクレームを網羅しているわけではありませんが、あくまでヒントのひとつとして、ぜひ、トラブルを未然に防ぐための参考にしていただけると幸いです。
目次
クレーム・ご意見はとにかく真摯に対応すること
患者様からクレームやご意見が寄せられたときには、まず相手の気持ちになって真摯に対応することが肝心です。相手の気持ちを汲まない事務的な対応では、事態の悪化を招いてしまいます。
そのため、クレームや意見が寄せられた時に最も重要なことは、「お詫びの言葉を述べる」ことです。顧客がクレームや意見を伝えているときは、気持ちが高ぶっている場合が多いでしょう。相手の気持ちを静めるためにも、「お詫び」の言葉が大切です。
治療院の中には、「安易に謝ってはいけない」とスタッフに指導している場合もあるでしょう。謝ることはこちらの非を認めたことになり、補償を求められることを警戒するがゆえだと考えられます。
しかし、実際の現場ではお詫びを口にしない限り、クレームはおさまりません。お詫びの言葉のない対応は、かえって患者様のクレームや意見を激化させてしまいます。クレームを寄せる患者様の多くは、自身に落ち度があるとは考えていないため、まずはお詫びの言葉を聞かない限り、話し合いにも応じてもらえないケースがほとんどです。
ただし、「お詫び」と「正式な謝罪」は異なります。
お詫びでは、「相手が感じた不快感」「相手が感じた不満」「こちらの不手際」に絞った文言を選ぶことが重要です。
たとえば、「お加減はいかがでしょうか?」と相手を気遣ったうえで、
- 「ご不快な思いをさせてしまい」
- 「ご不便をおかけしてしまい」
- 「お手間をとらせてしまい」
申し訳ございません、と続けましょう。
上記の表現であれば、「ご不快な思いをさせてしまったこと」に対してお詫びしたにとどまります。「過失を認めて謝罪したわけではない」と主張できるのです。
お詫びによって患者様の気持ちが少しおさまったら、次に「傾聴」をおこないます。 傾聴とは、聞き役に徹して相手の言いたいことにただひたすら耳を傾けることです。 傾聴することによって、相手の怒りの矛先や本当に望んでいることなどがみえてくるでしょう。患者様も言葉にして話すことで、自分の気持ちが整理でき、徐々に落ち着きを取り戻すことが多いようです。
そして患者様がひととおり話し終わったら、内容を復唱しましょう。復唱によって「お気持ちを理解した」ことが伝えられます。
最後に、患者様が納得できる対応策を提案します。患者様から提案される場合もあるでしょう。クレームや意見に対して治療院としてできる範囲で、誠心誠意対応することが大切です。
治療院で発生しやすいクレームとは
治療院で発生しやすいクレームをあらかじめ知っておくことで、クレームを未然に防ぐことができるかもしれません。次の内容をしっかりチェックしておきましょう。
受付スタッフの対応に対するクレーム
受付スタッフは、すべての患者様と接します。待合室から常に見える場所でもあるため、クレームを受けることも多い場所です。
受付で発生しやすいクレームは、待ち時間や予約、時間外対応への返答に対するクレームです。
待ち時間が長かったり、予約が取りにくかったりすると、クレームに繋がりやすい傾向にあります。ほかにも、患者様同士のトラブル(話し声がうるさいなど)に対するスタッフの対応にクレームが入ることもあるでしょう。 受付スタッフは、「体調に不安がある方が待ち時間を過ごされている」ことを忘れず、常に丁寧な対応を心がけてるようにすることが大切です。
治療費に関するクレーム
治療費では、次のトラブルがよく挙げられます。
- 治療内容に満足できないことによる支払い拒否または返金要求
- コース形式の治療価格への不満
- 通院が続くことによるトータルコストへの不安
治療費に関するクレームの中で、コース料金やトータルコストへの不満・不安は、事前説明や話し合いで解決できる可能性が高いでしょう。ここで気をつけたいのは、支払い拒否や返金要求です。
クレームを早く鎮めるための対応として、治療費の返金や代替贈呈(1回無料や回数券など)で対応するケースもみられますが、あまりおすすめできません。
一度お金で解決してしまうと、「次回もクレームを入れれば無料にしてもらえる」と捉えられます。また、このような対応方法が他の患者様にも伝わると、クレーム件数が増える恐れもあります。
そのため、支払い拒否や返金要求といったクレームが発生しないよう、患者様からこれまで寄せられた意見やクレームから、どういったところに不満を感じられたのかを洗い出して、クレームの原因になりそうなことは、出来る限り排除しておきましょう。
施術後に痛みが出た(整骨院の場合)
整骨院でよくあるクレームは、「施術後の痛み」です。
患者様からすると、痛みから解放されるために来院したのに、痛みが増してしまったのでは、不満に思うのは当然ともいえます。
しかし、施術内容や患部によっては、施術後に一時的に痛みが生じる場合もあります。
このケースは施術者があらかじめ想定できるはずなので、事前にしっかりと説明しておくことがクレームを防ぐために重要です。
施術後の違和感(鍼灸院の場合)
鍼灸院では、施術後の違和感を訴えられることが多いようです。
鍼やお灸(火)を使う施術では、
- 内出血ややけどのおそれがあること
- 鍼による響き(違和感)が残る場合があること
- 感染リスクに関すること
を施術前にしっかりと患者様に説明し、納得いただくことが重要です。
患者様に施術後に起こりうることを理解してもらうことで、苦情やクレームを未然に防ぐことができます。
クレームを未然に防ぐためにできること
ここではクレームの発生を抑えるために、事前に準備できることを確認しておきましょう。
患者様には、丁寧な説明を心がける
前述のとおり、施術前に患者様へ丁寧な説明をおこなうことがクレームを抑止するうえで非常に重要です。治療の内容や、考えられる術後の症状は、事前にしっかりと伝えることがポイントです。
小さなリスクも事前に患者様に説明しておくことで、トラブルに発展することを防げます。
施術後に痛みが出たというクレームを受けたときに、「好転反応で痛みが出ることがある」と伝えても、患者様には言い訳にしか聞こえません。さらに大切なのは、「繰り返し伝える」ことです。
施術者にとっては当たり前のことでも、患者様には「初めて聞くこと」です。一度耳にしただけでは、忘れてしまうことも少なくありません。患者様の目線に立ち、大事なことは、繰り返し伝えるようにしましょう。
クレーム内容と対応を院内で共有する
今後のクレームを防ぐために、これまでに寄せられたクレームや意見は、内容や対応方法を治療院スタッフの全員で共有するようにしましょう。患者様に対してもいただいた意見が反映されていることが伝えられますし、スタッフの対応も統一されます。
情報を共有するためには、対応マニュアルの作成が効果的です。一度経験したトラブルとその対応は随時掲載していきましょう。
定期的にマニュアルを見返すことで、同様のクレームへの対処、クレームを未然に防ぐことにもつながります。
まとめ
治療院でクレームが発生する原因や未然に防ぐ方法をご紹介しました。
クレームが発生したときには、まず患者様へお詫びをし、患者様の声に真摯に耳を傾けることが大切です。
経験したトラブルは対応マニュアルを作成することで仕組み化し今後の院運営に役立てるようにしましょう。
不満を感じても何も言わずに二度と来院されなくなった患者様もいるかもしれません。クレームは、患者様の満足度を向上し更なる信頼関係を築くチャンスでもあると捉えて、対応の準備や見直しに取り組まれてはいかがでしょうか。