「整骨院を開業したいけれど、資金はいくら必要?」
「資金調達はどうすればいい?」
こうした悩みをお持ちではないでしょうか。
本記事では整骨院の開業を検討している方に向けて、昭和初期から鍼灸院に関わってきた医道の日本社が、以下の内容についてお伝えします。
・開業資金の概算
・開業資金の内訳
・開業資金を確保する方法
本記事で取り扱う開業資金は、あくまで概算のものですが、具体的なシミュレーションを通して、整骨院を開業するために必要な資金の概算と準備方法をイメージしていただけます。ご参考になれば幸いです。
目次
整骨院の開業資金の相場はいくら?
治療院の開業にかかる費用は、店舗面積や立地条件・物件の契約形態・どこまで内装にこだわるかなどによって大きく変動します。よって厳密な相場の計算は、難しいのが正直なところです。
イメージを深めていただくため今回は、整骨院・接骨院を開業する際に一般的とされる、以下の条件を想定してお話を進めていきます。
・個人事業主として
・テナントやマンションなどの賃貸物件で
・広さ18坪程度、賃料15万円の規模で
上記の条件で開業する場合、開業資金の総額は、初期投資費用がおおよそ670万〜1,220万円、運転資金は435万円ほどが目安になるかと思われます。
では、この「初期投資」と「運転資金」とは何か。
次項から「初期投資」と「運転資金」について詳しく紐解いていきます。
整骨院の「初期投資」はいくらかかる?
まずは「初期投資」についてです。初期投資は、開業に先立って必要なものとそれにかかる費用です。
開業にあたって必須となってくるのは、
・店舗(物件)
・内装・外装の工事
・治療や業務に利用する機器・備品
・院の広告宣伝
最低でも上記の4点です。これらは開業にあたって「なければ治療院が始められない」ものなので、しっかりと費用を準備しておきたいところです。
各仔細を解説するにあたって、各内訳は以下を想定しています。
・店舗(物件)費用:90万〜250万円
・内外装の工事費用:360万〜540万円
・機器・備品の費用:200万〜330万円
・広告宣伝費:20万〜100万円
合計:670万〜1,220万円
店舗(物件)にかかる費用
店舗・物件の費用については不動産によって変動するため、一概には言えません。今回は賃料の目安を15万円/月としているので、物件を借りるのに必要な敷金・礼金・仲介手数料・前家賃を以下のように設定しました。
・敷金:賃料の2ヶ月分
・礼金:賃料の2ヶ月分
・仲介手数料:賃料の1ヶ月分
・前家賃:賃料の1ヶ月分
上記の場合なら、必要な店舗資金は90万円となります。
ただし、敷金礼金が3ヶ月分が必要な場合もあれば、賃料の10ヶ月分を前払いで支払うケースもありますので最大値250万円とし、必要な店舗資金は90万〜250万円としています。
物件の契約条件によっては大きな費用負担となるため、しっかりと契約内容を確認して店舗を選びましょう。
内装・外装の工事費用
18坪の物件が前提なので、坪単価を20万〜30万円と想定した上で単純計算した場合、材料費を含む内装・外装の工事費用は以下となります。
・工事費用:360万〜540万円
「治療院なので凝った内装は必要ない」と思われるかもしれませんが、シンプルな内装工事でも坪単価で最低360万円は必要ということを念頭に入れておきましょう。工事費用は店舗の規模によって大きく変動しますので、居抜きなどで工事を最小限に留められる物件を選ぶか、店舗自体の広さを絞るなどして検討するのも手です。
坪単価の目安と安く抑えるコツについては、以下の記事でも解説していますのでご参考ください。
デザインから発注まで!鍼灸・整骨院の内装工事で押さえるべきポイントとは
治療や業務に利用する機器・備品の費用
治療院を始めるには、施術に利用する医療機器や器具などの備品、レセプトコンピュータや電子カルテなどの機械、その他消耗品などを一式揃える必要があります。
それらにかかる費用は、おおよそ200〜330万円ほどが目安です。
【整骨院のメニューで用いられる機器の一例(新品の場合)】
・低周波治療器:50万円〜
・干渉波治療器:30万円〜
・ローラーベッド:100万円〜
・レセプトコンピュータ:初期費用30万円〜
※レセプトコンピュータに関しては、メーカーによってかなりの開きがあるため、今回は30万円で設定しています(別途で発生する月額費用については除いています)。
【備品の一例】
・待合室用イス・カーテン:10万円〜
・タオル・シーツ:5万円〜
・人骨模型:5万円〜
・各種消耗品:5万円〜
治療のメニューや開業時にどの程度まで揃えるかによって金額は変わりますので、これらは最低限を揃えておくのに必要な金額の目安と捉えてください。
出費を抑えたい場合は、機器類については中古やリースの利用も検討するのも良いでしょう。
広告宣伝費
広告宣伝はどこまで力を入れるか、どういった施策を行うかで金額の振り幅がかなり大きく、上限も青天井です。
冒頭で広告宣伝費の目安を20万〜100万円としましたが、これは簡易的なホームページを作成したり、近隣にチラシを配布したりといった最低限の集客を行った際の目安と見てください。
お金をかけてまで大それた宣伝をする必要は…と思われるかもしれません。
ですが、新規で店舗をオープンする場合、地域の人々に開業を知らせて集客を行わないと売上が見込めません。
フランチャイズ店舗であれば本部が宣伝や集客を行ってくれることもありますが、個人開業の場合はそれも叶わないので、ある程度の広告宣伝費用は確保しておくのが得策です。
整骨院の「運転資金」はいくらかかる?
続いては「運転資金」についてです。
運転資金は、店舗の運営・営業を継続していくための経費で、店舗を続けている限りは毎月必ず発生するものです。
オープンしたばかりの頃は売上が見込めず、自転車操業すらままならないことがほとんどなので、当面の運転資金をあらかじめ確保しておく必要があります。
今回は月間の売上を300万円、そのうち人件費を35%と定めた上で、月の運転資金の概算を以下の通り算出しました。
・人件費:105万円
・店舗賃料:15万円
・水道光熱費:10万円
・消耗品費:5万円
・広告宣伝費:10万円
合計:145万円/月
特に人件費はスタッフの人数によって変わるのであくまで概算です。
運営が軌道に乗るまでの期間として、少なくとも3ヶ月〜半年分程度の運転資金はほぼ初期投資と同じと考え、先に確保しておくと安心です。
整骨院のフランチャイズでの開業にはいくらかかる?
では、個人開業ではなくフランチャイズに加盟して開業をする場合はどうなるでしょうか。
基本的な初期投資費用や運転資金は変わりませんが、フランチャイズの場合は、親元となるフランチャイズ本部に加盟金や売上ロイヤリティを支払うのが一般的です。
加盟するフランチャイズによって異なりますが、固定制ならば月額5万〜15万円ほど、変動制であれば売上の5%〜10%ほどの金額の支払いが発生することが多いです。
その他、本部指定のシステムなどの導入が必須の場合もあり、システム利用料の支払いが必要なこともあります。
フランチャイズ営業は個人開業に比べて運転資金が増えることになりますが、その分フランチャイズ元が集客を行ってくれたり、経営についての支援を受けたりできるというメリットもあります。
「初期投資」と「運転資金」はいくら必要か?
詳細がわかったところで、必要資金を再度振り返ってみましょう。
【初期投資】
・店舗(物件)費用:90万〜250万円
・内外装の工事費用:360万〜540万円
・機器・備品の費用:200万〜330万円
・広告宣伝費:20万〜100万円
合計:670万〜1,220万円
【運転資金(3ヶ月分)】
・人件費:315万円
・店舗賃料:45万円
・水道光熱費:30万円
・消耗品費:15万円
・広告宣伝費:30万円
合計:435万円/月
これらが整骨院・鍼灸院などの治療院の開業に必要な資金の目安となります。
繰り返すようですが、どこにどれだけお金をかけるか・削るかによってかかる金額は変わってきますので、これらはあくまで目安です。
工夫次第で費用を安く抑えることもできますので、ご自身がどこに予算を割きたいか、準備した予算でどこまでできるかを細かく計算して計画を立てるようにしましょう。
また、開業後のきちんとした運営見込みが立っていれば、専門の機関の融資を受けられる場合があります。
民間の銀行・信用金庫・日本政策金融公庫の創業融資などの選択肢がありますので、もし資金調達に不安があるのなら、専門家に相談してみるのもおすすめです。
まとめ
整骨院の開業資金についての概算と、知っておきたいポイントをご紹介しました。本記事で解説した金額は、あくまで概算のものですが、開業前の資金面について、少しでもご参考になれば幸いです。
資金は無限ではありませんので、必ずどこかで取捨選択をする場面が出てきます。
大切なのは、自分がやりたいことに対していくら必要なのか、どこにいくらかかるのかをきちんと把握しておくことです。
本記事でご紹介したポイントを参考に、計画的に整骨院の開業準備を進めていきましょう。