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医道の日本プレイバック(8)倉島宗二「針灸臨床55年の経験から」(1987年)

公開日:2012年9月10日|最終更新日:2024年8月6日

倉島宗二「針灸臨床55年の経験から」(1987年)

昭和の名鍼灸師、倉島宗二(1911‐1995)。鍼灸に関する多彩な執筆と、聴くものを魅了する講演で鍼灸界にファンが多かった倉島だが、代田文誌門下の俊英で、1977年には代田賞創設にもかかわったことからも、そのベースが日々の臨床にあることはよくわかる。

その臨床経験は55年以上であり、患者の延人数は53万人以上、疾病の種類は650を超えているというから驚きだ。

そんな倉島が自らの治療経験を振り返り、Excellent(著効)、Good(有効)、Fair(効・無効不定)、Poor(乏しい・貧弱)に分類したのが、本稿「針灸臨床55年の経験から」である。

倉島はこの中で、「もとより常識的に針灸不適応と考えられるような疾患でも、針灸施術によって、意外な好成績を収める症例もあるが、反対に治癒確実の見込みで治療して、結果が面白くないという症例もある。治療して見なければ判らないということが多い」と述べ、657病種中、93種をExcellent、 180種をGood 、189種をFair、 195種をPoorとしている。たとえば小児疾患では喘息はExcellent、疳の虫はGood、アデノイドはFair、アトピー性皮膚炎はPoorと いった具合だ。

これらは現在、全日本鍼灸学会等で発表されている適応・不適応の考え方と異なるかもしれない。もちろん倉島本人も「個人の経験」と断っている。しかし、鍼灸は経験医学的な側面があり、先人の症例や治験に学ぶべきことは多いはずだ。倉島は本稿の中で次のように記している。

「針灸治療には奇策もなく、奇道もなく、したがって奇跡もない。(中略)ほんの少し、自然治癒力を亢進させるだけでも、それを続けるならば、結果は霄壌(天と地)の差となる。生と死の差が生じる。針灸治療とは、本質的には、そういうものであろうと理解している」

現在は鍼灸治療のガイドラインが求められている時代である。ぜひ一度、参考にしていただきたい。

注:当時の原稿をそのまま掲載しているため、国際疾病分類など現在、通俗している疾患名・疾患表記、分類とは異なることがあります。

月刊「医道の日本」 1987年7月号 PDFファイル

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