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中国鍼灸学会「COVID-19のための鍼灸介入ガイドライン(第2版)」(2)(医道の日本社訳)

公開日:2020年11月20日|最終更新日:2022年2月28日

2020年3月2日、新型コロナウイルスに関して、中国鍼灸学会は「COVID-19のための鍼灸介入ガイドライン(第2版)」を作成し、世界鍼灸連合会(WFAS)を通じて発表しました。本記事では、医道の日本社の訳を掲載します。

※新型コロナウイルス流行先行国である中国の治療の参照が目的であり、使用を推奨するものではありません。中国での実際の治療は、感染防御・対策されたうえで行われていることをご留意ください。

【原文】
http://en.wfas.org.cn/news/detail.html?nid=5403&cid=25

▼本記事の前半は下記よりご覧ください。
中国鍼灸学会「COVID-19のための鍼灸介入ガイドライン(第2版)」(1)

Ⅱ.鍼灸介入の方法

ⅰ.医学観察期の鍼灸介入(疑い例)

【目的】
正気および肺と脾の機能を刺激し、疫病の邪気を打ちのめして分離し、取り除き、臓器の邪気に対する抵抗力を増強する。

【主穴】
(1)風門(BL12)、肺兪(BL13)、脾兪(BL20)
(2)合谷(LI4)、曲池(LI11)、尺沢(LU5)、魚際(LU10)
(3)気海(CV6)、足三里(ST36)、三陰交(SP6)
治療ごとに、各群の中から1~2穴を選択する。

【配穴】
発熱、喉の乾き、乾性咳が組み合わさった症状は、大椎(GV14)、天突(CV22)、孔最(LU6)。悪心嘔吐、軟便、舌の胖大と膩苔、濡脈が組み合わさった症状は、中脘(CV12)、天枢(ST25)、豊隆(ST40)。疲労感、脱力感、食欲不振が組み合わさった症状は、中脘(CV12)、臍の周りの4穴(臍から上下左右に1寸離れた場所)、脾兪(BL20)。透明な鼻水、肩と背部の痛み、淡舌と白苔、緩脈が組み合わさった症状は、天柱(BL10)、風門(BL12)、大椎(GV14)。

ⅱ.臨床治療期の鍼灸介入(確定例)

【目的】
肺と脾の正気を刺激し、臓器を保護し、損傷を減らし、病原の邪気を駆除し、「土を培い、金を生む(訳注:脾と肺を補益する)」。疾患の勢いを停め、気分を軽くし、病邪に打ち勝つ確信を強くする。

【主穴】
(1) 合谷(LI4)、太衝(LR3)、天突(CV22)、尺沢(LU5)、孔最(LU6)、足三里(ST36)、三陰交(SP6)
(2) 大杼(BL11)、風門(BL12)、肺兪(BL13)、心兪(BL15)、膈兪(BL17)
(3) 中府(LU1)、膻中(CV17)、気海(CV6)、関元(CV4)、中脘(CV12)
 軽症例と一般症例の治療には、その都度、(1)と(2)の群から2~3の主穴を選択し、重症例の治療には(3)の群から2~3の主穴を選択する。

【配穴】
長時間の発熱を伴う症状は、大椎(GV14)、曲池(LI11)、または(訳注:奇穴の)十宣(訳注:Ex-UE11)と耳尖(訳注:Ex-HN6)からの瀉血。胸部絞扼感、息切れを伴う症状は、内関(PC6)、列欠(LU7)、または巨闕(CV14)、期門(LR14)、照海(KI6)。痰を伴う咳の症状は、列欠(LU7)、豊隆(ST40)、定喘(Ex-B1)。下痢、軟便を伴う症状は、天枢(ST25)、上巨虚(ST37)。粘り気のある痰や黄色の痰、便秘を伴う咳の症状は、天突(CV22)、支溝(TE6)、天枢(ST25)、豊隆(ST40)。微熱、気づかない熱、または平熱、嘔吐、軟便、紅舌または淡紅舌、白苔または白膩苔が組み合わさった症状は、肺兪(BL13)、天枢(ST25)、腹結(SP14)、内関(PC6)。

ⅲ.回復期の鍼灸介入

【目的】
残留ウイルスを除去し、生命力を回復し、臓器の修復を促進し、肺と脾の機能を回復させる。 【主穴】
内関(PC6)、足三里(ST36)、中脘(CV12)、天枢(ST25)、気海(CV6)。

1.肺脾気虚
息切れ、疲労感、食欲不振、嘔吐、胃膨満、排便する力の不足、残余感のある軟便、淡胖舌と白膩苔の症状。胸部絞扼感、息切れなどの明らかな肺の症状がある患者には、膻中(CV17)、肺兪(BL13)、中府(LU1)。食欲不振や下痢などの明らかな脾と胃の症状を持つ患者には、上脘(CV13)、陰陵泉(SP9)。
2.気陰両虚(訳注:気虚と陰虚が同時に見られる)
衰弱、口腔内の乾燥、喉の乾き=口渇、動悸、多汗、食欲減退、低熱または熱が無い、少しの痰を伴う乾いた咳、少ない唾液と乾舌、細脈または虚脈の症状。明らかな衰弱と息切れのある患者には、膻中(CV17)、神闕(CV8)。口腔内の乾燥と喉の渇きが明らかな患者には、太渓(KI3)、陽池(TE4)。明らかに動悸がある人は、心兪(BL15)、厥陰兪(BL14)。多汗の患者には、合谷(LI4)、復溜(KI7)、足三里(ST36)。不眠症の患者には、神門(HT7)、印堂(GV29)、安眠(Ex)、湧泉(KI1)。
3.肺気脾気の不足、経絡を遮断する痰の停滞
胸部絞扼感、息切れ、会話の嫌気、疲労感、動くときの発汗、痰を伴う咳、痰が詰まる、鱗状の乾燥肌、精神的疲労感、食欲不振などの症状は、肺兪(BL13)、脾兪(BL20)、心兪(BL15)、膈兪(BL17)、腎兪(BL23)、中府(LU1)、膻中(CV17)。痰が詰まっている患者には、豊隆(ST40)、定喘(Ex-B1)。


鍼灸の施術
実施環境や管理要件に応じて、適宜選択する。

上記3つの病期において、鍼のみを使用するか、灸のみを使用するか、あるいは両方を組み合わせて使用するか、あるいはツボへの(薬物の)塗布、耳鍼、ツボ注射、かっさ、小児マッサージ、指圧などと組み合わせるかは、状況に応じた選択が推奨される。

鍼は平補平瀉法で操作する。鍼は各ツボに20~30分置鍼、灸は各ツボに10~15分施術する。治療は1日1回とする。具体的な操作方法については、国が定めた「鍼灸技術操作規範」の基準や臨床経験を参考にする。

Ⅲ.医師の指導の下に行う在宅の鍼灸介入

COVID-19の流行を予防・制御するために、外出を減らし、交差感染を回避し、感染源を遮断し、安全性を確保するとともに、自宅隔離の患者や退院した患者には、専門家の指導の下、オンライン診療・指導、科学の普及・教育により鍼灸介入を行うことができる。

灸治療
足三里(ST36)、内関(PC6)、合谷(LI4)、気海(CV6)、関元(CV4)、三陰交(SP6)への患者自らの灸。1穴の灸の所要時間は約10分。

塗布治療
灸熱貼(温感の灸ペースト)や代温灸膏(温感の灸クリーム)を足三里(ST36)、内関(PC6)、気海(CV6)、関元(CV4)、肺兪(BL13)、風門(BL12)、脾兪(BL20)、大椎(GV14)などのツボに塗る。

経絡マッサージ
上肢の肺経と心経、膝下の脾経と胃経のツボに対して、点法(指圧)・揉法・按法(圧迫)あるいは揉按法・拍打法・叩打法を用いる。1回の施術時間は15~20分。施術部位に腫れぼったい感覚があるのが適切となる。

伝統的気功法
自分の回復状況に応じて、易筋経、太極拳、八段錦、五禽戯などの適切な伝統的気功法を選択する。1日1回、1回15~30分程度の練習を行う。

精神的健康
自分の感情を調整する。耳ツボ、灸、マッサージ、薬膳、ハーブティー、薬湯、音楽などを併用して、心身をリラックスしたり、不安を解消したり、睡眠を助けたりすることができる。

足湯
風邪や熱邪を払う働きのある漢方薬を選び、邪気を排除する。荊芥、艾葉、薄荷、魚腥草、大青葉、佩蘭、石菖蒲、辣蓼草、鬱金、丁香をそれぞれ15g、さらに氷片(竜脳・ボルネオール)3gを加えて煎じ薬を作る。煎じ薬を足湯に注ぎ、ぬるま湯を加え、38~45℃くらいまで冷めるまで待ち、30分ほど浸す。

このガイドラインは、中国鍼灸学会の専門家グループによって策定されたものである。

顧問:石学敏、仝小林、孫国傑
専家組組長:劉保延、王華
専家組成員:喩暁春、呉煥淦、高樹中、王麟鵬、方剣橋、余曙光、梁繁栄、冀来喜、景向紅、周仲瑜、馬駿、常小栄、章薇、楊駿、陳日新、趙吉平、趙宏、趙百孝、王富春、梁鳳霞、李暁東、楊毅、劉煒宏、文碧玲

監訳:荒川緑氏(学校法人素霊学園 東洋鍼灸専門学校 図書館長)

▼本記事の前半は下記よりご覧ください。
中国鍼灸学会「COVID-19のための鍼灸介入ガイドライン(第2版)」(1)

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