【海外で働く】イタリアのフットサルチーム「Ecocity Futsal Genzano(セリエA)」で現役トレーナーとしてご活躍されている中谷駿佑先生にインタビューしました!
目次
- 19歳の時、将来への不安が未知の世界に飛び込む後押しとなりました。
- 今思うと、SNSでもっと情報収集をしておくべきでした。情報収集兼コネクション拡大は事前に絶対にやった方がいい根回しの一つです。
- ふつうにネット検索しても海外ではたらくことに関する情報があまり出てこないように感じます。 中谷先生は、どのように情報収集をされていましたか? また、おすすめのサイト等はありますか?
- 海外ではたらくには、いわゆる“コネ”が重要というお話をよく耳にしますが、実際のところどうでしょうか? また、コネのない方がコネをつくる方法やチャンスはありますか?
- よく聞かれる質問かと思いますが、国内で取得しておいたほうが良い資格やスキルはありますか? また、心構えなど準備としてこれだけはやっておいたほうが良いということは何かありますか?
- 中谷先生は、鍼灸師の資格もお持ちですが、その知識がお仕事で役立つシーンはありますか?
- 苦労したことは数知れず。苦労の数だけ感謝をしている。
- 大切なことは自分の行動に情熱を注いでいるかどうかだけです。
- プロフィール
19歳の時、将来への不安が未知の世界に飛び込む後押しとなりました。
いつ頃から海外を意識されていましたか?また、それはなぜでしょうか?
海外に興味を持ったのは、19歳(当時、大学2回生)の時。
「将来はスポーツトレーナーになる」と決めて資格取得のために選んだ進路でしたが、当時の私は『今のまま学生生活を過ごしていても、将来は自身のスキルを活かせない特徴のない治療家になってしまうかもしれない。そうなりたくないが、どうやってその将来を回避すればいいかわからない。』といった不安がありました。そんな時、たまたま立ち寄った教授室の扉に『アメリカ・オレゴン州トレーナー短期研修募集』というチラシを見つけました。これが私を海外トレーナーの道に引き込みました。
『そうだ!まず、環境を変えてみよう。そうすれば、未来も変えられるかもしれない。それに海外で働く日本人トレーナーってなんだかカッコよさそう。』といった「すがる気持ち」と「子供のような無邪気な憧れ」を抱いたことを今でも覚えています。
なぜ、イタリアを選ばれたのでしょうか?
ヨーロッパ圏で、一番最初に自分の前に来た選択肢がイタリアだったのが理由です。
22歳の時(大学卒業時)にスペインの海外短期研修に行ったことがきっかけです。この時に、働くならアメリカではなく、ヨーロッパがいいなと思いました。理由は単純で英語が嫌いで苦手意識も強かったからです。と言っても当時はヨーロッパの言語が話せたわけではありません。 大学を卒業し、専門学校2年時から近畿大学体育会サッカー部のトレーナーや、フィギアスケートの陸上トレーニングのトレーナーをしながら長期研修の機会を探っていました。
そして、チャンスを見つけたのが24歳(2018年10月)の時でした。この時は「スペインじゃなくイタリアか。まぁ、イタリア語とスペイン語は似てると言うし、何よりできるだけ早くヨーロッパへ行きたい。」と思っていたので、目の前に来たチャンスをつかみ取りました。10月末にお話をいただき、翌週には決断していたと記憶しています。
当時、(大学卒業時に行った)スペインの研修から2年経っていましたが、ヨーロッパの言語は何一つ話せませんでした。
今思うと、SNSでもっと情報収集をしておくべきでした。情報収集兼コネクション拡大は事前に絶対にやった方がいい根回しの一つです。
ふつうにネット検索しても海外ではたらくことに関する情報があまり出てこないように感じます。 中谷先生は、どのように情報収集をされていましたか? また、おすすめのサイト等はありますか?
私はセミナーへの参加が主でした。今思うと、SNSでもっと情報収集をしておくべきでした。 私がおこなった渡伊前の情報収集の手段としては、ヨーロッパのスポーツに関係する国内セミナーへの参加です。ヨーロッパ関係なら割と無差別に行っていました。参加したセミナーの一つがイタリアの長期研修の入り口でした。
私は行きたい場所が「ヨーロッパ」と広く、その中でイタリアのお話に出会ったので迷わず飛びつきましたが、トレーナーとして働きやすい国が、ドイツだったということを知ったのは後の祭りでした。(といってもイタリアにいることに後悔は全くありません。)
今であれば、情報収集するならnote, X, InstagramなどSNSで現地にいる誰か(理想はトレーナー)とつながり、そこからの紹介やDMで情報網や人脈を広げていくのが良いと思います。それこそ、以前私にDMをくださった方が実際にイタリアに来られた際は、アテンドしたこともあります。そういった情報収集兼コネクションの拡大は旅立つ前に絶対にやった方がいい「根回し」の一つだと思います。
海外ではたらくには、いわゆる“コネ”が重要というお話をよく耳にしますが、実際のところどうでしょうか? また、コネのない方がコネをつくる方法やチャンスはありますか?
コネクションはあった方が断然いいです。
今の時代、コネの作り方は無限大だと思います。 先ほども書いたように現地の人にDMを送るのもコネクションを得る方法の一つです。 例えば、チームにDMで連絡する。それで返信してもらえないなら、チーム関係者の友達に口を聞いてもらうのも手です。そんな友達もいないよという方は、お金を払って機会を買うのも良いでしょう。いわゆる海外研修への参加です。
行く国で人脈や実績が何もないのでしたら、いろんな手を駆使して繋がりを作ってください。まずはそこからです。 繰り返しになりますが、今の時代コネの作り方はアイデア次第で無限大だと思います。
よく聞かれる質問かと思いますが、国内で取得しておいたほうが良い資格やスキルはありますか? また、心構えなど準備としてこれだけはやっておいたほうが良いということは何かありますか?
どの国に行くか、また、何をしたいかによって異なるのでここでお勧めを明言することは避けます。
この質問は何度も受けてきました。私は「どこで、何がしたいかによって変わるよ」といつも同じ言葉を返します。例えば、行く国によって日本の資格が書き換えることが出来る、出来ないが変わってきます。また、海外で一年限定で活動するなら、実際のスキルさえあれば、資格はほとんど要らないと思います。(もちろんあった方がいいです。)ですが、複数年その国に居ついて、トレーナーとして稼ごうと思うのでしたら話は変わってきます。
今、一例を挙げただけでも変わってくるので、今の自分の状況と、将来どこで何がしたいかの方針をある程度はっきりさえたうえで、是非私や海外で活動している方に連絡をしてみてください。 今までの経験を通して、何かお答えできることがあるかもしれません。
ちなみに私は渡伊後、現地のスポーツに関われる資格が必要と思い、ローマにある浪越指圧の学校に通いました。3年間通い、開業権のあるマッサージ師の資格を取得しました。
中谷先生は、鍼灸師の資格もお持ちですが、その知識がお仕事で役立つシーンはありますか?
鍼灸治療は全体を診ていろんな角度から治療できるのでとても役に立っています。 患部(局所)だけの治療に固執しなくて良いので治療時の苦痛も少ないです。症状がない時は、似たようなポイントをセルフマッサージするように指導することで予防にもつながります。何より患部を触らなくても治療効果を出すことでクライアントが驚き、信用が得られる。 そういった意味で鍼灸は学んでおいてよかったなと思います。
苦労したことは数知れず。苦労の数だけ感謝をしている。
実際にイタリアではたらくにあたって、苦労したことは何ですか?
初めての海外長期滞在に際して苦労したことは山ほどありました。 皆さんがまず思いつく言語の壁ですが、苦労しました。何なら今でも言語のレベルは小学生の域を超えてないとイタリア人の妻にダメ出しをされますし、わからないことはいくらでもあります。
次にVISAと滞在許可書の取得も大変でした。VISA(日本語でいうと査証)というのは入国審査の予備審査を通過した証明書のことを指します。これは日本国内にある、自分が行く国の大使館もしくは領事館でつくります。私の場合は日本にあるイタリア領事館でつくりました。さらにイタリア入国後、イタリアの移民局で滞在許可書(90日以上の長期滞在をする際に必要な物)を作りました。そして、銀行のデヴィットカードをつくるのも一苦労でした。
見知らぬ土地で、まったくわからない言語の中でこういった行政手続きや事務手続きをするのは至難の業でした。 苦労は挙げだしたらキリがないと思います。でも、その時は何とか解決しようともがいて、必死だったので苦しいとかの感情はなく、今では「こういう思い出あったよね」という感じです。 その苦労の裏には必ずと言っていいほど協力者がいました。いろんなところで手伝ってくれた方々には感謝しかありません。
トレーナー以外で、鍼灸師や柔整師として海外(イタリア)ではたらく手段はありますか? たとえば、鍼灸整骨院ような治療院はあるのでしょうか?
イタリアだとスポーツジムやマッサージ屋さん(リラクゼーション)ですね。
原則、イタリアの治療院はイタリアの国家資格を持つ理学療法士と医師しか働けないです。日本の理学療法の資格をイタリアのものに書き換えれば働けますが、私は書き換えを行った日本人の噂を耳にしたことが一度もありません。 ヨーロッパのほかの国の例ですが、ポルトガルには日本人鍼灸師がいます。(2019年にメールでご挨拶をしたきりなので現在は把握しておりません。)
ドイツには、日本人理学療法士さんがたくさんいるのは有名なことです。スペインやイギリスにも日本人治療家はいらっしゃいます。(基本、コンタクト取れる方は全員取っています。) 上記の国の皆様は治療院やクリニックなどでご活躍されています。
収入(年収)についてお聞きします。日本と比べて、イタリアはどうでしょうか? 一部情報によれば、日本よりも収入(年収)がアップするとの情報(噂)もあるのですが・・
トレーナーの収入は関わるスポーツの経済規模とカテゴリーによって決まります。
昨今は円安ユーロ高ですのでそう思われやすいのかもしれませんが、日本に比べて給料が良いということはないと断言します。そもそも、日本とイタリアの経済力の差は歴然です。イタリアでの大学卒業の初任給の額面は一説によると、800ユーロから1200ユーロです。修士課程卒の初任給の額面で1000ユーロから1500ユーロと言われています。(日本円にすると)大卒で約13万円、修士卒業で約17万円。このような国でスポーツ関係の給料が一般的に高いと思われますか?
一部例外として、国民的スポーツのサッカーは規格が違います。トレーナーも家族を支えられるくらいは給料をもらっているでしょう。しかし、それもプロのカテゴリーのみです。セミプロと呼ばれる4部以下はトレーナーは副業を強いられます。チームの練習時間以外は、別のところで働き、チーム練習時に帯同する。それも、毎練習ではなく決まった曜日だけ来る場合もありますし、試合だけしか来ないトレーナーもいます。
現実はこんなものです。 ですので、決して海外でトレーナーをすると日本よりもらえると思わないでください。あくまでも「可能性は限りなく0に近いが、ある」程度です。
大切なことは自分の行動に情熱を注いでいるかどうかだけです。
これから海外で治療家としてはたらきたいと思っている学生・若者に何かメッセージがあればお願いします。
大切なことは自分の行動に情熱を注いでいるかどうかだけです。 海外トレーナーを目指すきっかけはちょっとした感動や好奇心、憧れで十分です。 外国語が話せなくったって、経験がなくったって、本当に海外で治療家として働きたいと思うのであればした方がいいです。
その前準備として、本当に海外で働きたいかを試すために、海外の短期研修は行った方がいいと思います。 海外でトレーナーとして働くことは偉いことでもすごいことでもないので「海外のチャンスがあったら絶対につかめ!!」と言うつもりは毛頭ありません。 若い時にやるべきことは、あなたが「面白い・やりたい」と思ったことをやることです。それが海外で治療家として働くことであれば、私はいち先駆者としてうれしく思います。 情熱を注げる何かに読者の皆さんが出会えることを祈念しております。
プロフィール
中谷駿佑 先生
『世界を渡り歩くトレーナー』になるために渡伊。対面トレーニング・オンライントレーニングで🇩🇪🇰🇭🇮🇹🇯🇵など様々な国で活躍する日本人選手をサポート。 また、海外へ挑戦したい若手トレーナーのサポートもしている。現在 Ecocity Futsal Genzano(セリエA)トレーナー。
(中谷先生 略歴 )
【滞在国】イタリア共和国
【所属】フットサルSerieA(1部) Ecocity Futsal Genzano メディカルトレーナー
【仕事内容】トレーナー業務(チーム帯同、マッサージ、テーピング、リハビリ指導など)
【イタリア滞在年数】2019年~(満5年)
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・2016年 宝塚医療大学 保健医療学部 柔道整復師学科 卒業
・2018年 平成医療学園専門学校 鍼灸師科 卒業
〈渡伊してからの経歴〉
・2019年2月イタリアに着き、すぐにLazio Calcio A5のメディカルトレーナー(男子セリエA、女子セリエA)に就任
・2019-2020シーズン 前年と同様にLazio Calcio A5のメディカルトレーナーを続行
・2020年3月初旬コロナによってシーズンが強制終了 同時にLazio を退団 浪越指圧ローマで国内で有効な資格の取得のため授業を受講し始める。
・2021年A.S.D Genzano C5(カテゴリー4部)のメディカルトレーナーに就任 ・2021-2022シーズン 前年と同様にA.S.D Genzano C5(カテゴリー4部)のメディカルトレーナーを続行
・2022-2023シーズン 前年と同様にA.S.D Genzano C5(カテゴリー4部)とEcocity Futsal Genzano(当時2部)のメディカルトレーナー
・2023-2024シーズン Ecocity Futsal Genzano U19/U17/U15のメディカルトレーナー
・2024年1月~ Ecocity Futsal Genzanoのメディカルチームにも招集され、約半シーズン帯同