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人の生きた筋膜の構造 (DVD付) 内視鏡検査を通して示される細胞外マトリックスと細胞

「生きた人体」による解剖本!筋膜の構造が今、解き明かされる

遺体を解剖して観察した従来の解剖本とは一線を画した、「生きている人体」を用いて、内視鏡検査によるミクロ解剖の本がついに日本に上陸した。手の外科医である著者が、20年間にわたり、1000件以上の手術で行った、内部組織の内視鏡研究の集大成ともいえる1冊である。
生きた人体において施術の効果を出すには、どんなタッチをするべきなのか。「徒手療法が、皮下組織に影響を及ぼさないと主張することはもはや不可能」と著者は言い、さらにこう続ける。「力に頼った施術を続けていきたいのであれば、これまでの教科書にある『乾いた筋と筋膜組織のイメージ』を取り換える必要はない」。本書によって、生きた筋膜の構造をつかめば、治療家の世界は一変することだろう。
身体の「偉大な統一者」である結合組織。人体が生きている状態で、どのように作用しているのだろうか。附属DVDでの映像とともに、存分に楽しんでいただきたい。

原書:Architecture of Human Living Fascia: The Extracellular Matrix and Cells Revealed Through Endoscopy
ISBN978-4-7529-3124-9
著者Jean-Claude GUIMBERTEAU, Colin ARMSTRONG
監訳竹井仁
仕様B5判 204頁
発行年月2018/1/10
価格10,780円(税込)

目次

第1章 組織連続性
第2章 原線維の連続性と形態
第3章 可動性と適応性
第4章 細胞と原線維構造の関係
第5章 空間配置、テンセグリティー、フラクタル化
第6章 多原線維ネットワークの適応と変性
第7章 形態に関与する構造の構成組織としての結合組織

<サンプル動画>


●監修者のことば
竹井仁(首都大学東京大学院教授・理学療法士・医学博士・OMPT・FMT・GPTH.O.I.)

本書は,ヒトの「生きた筋膜」の構造を,初めて詳細に説明した名著と言えます.

これまで,筋・骨・関節・神経などの,一般的な解剖学テキストは数多くありましたが,これらのテキストは,亡くなった方の身体を解剖して観察した本です.

筋膜の本には,Functional Atlas of the Human Fascial System(Carla Stecco, CHURCHILL LIVINGSTONE,竹井仁監訳,医歯薬出版)という筋膜の解剖学・生理学を詳細に述べた名著があります.
この本は,特殊な液体で屍体を保存し,1週間以内に解剖することで,生体と同じような状態を再現しています.しかし,これらは,ミクロ解剖(顕微鏡的解剖)よりもマクロ解剖(肉眼的解剖)を中心とした本です.
この本に対して,今回の筋膜の本は,内視鏡検査によるミクロ解剖の本とも言えます.しかも,生きている人の筋膜を詳細に記述した本です.20年間にわたり,1,000件以上の手術で行った内部組織の内視鏡研究の集大成とも言える本です.

"結合組織は身体の「偉大な統一者」であり,身体の被膜の内部で作動する細胞を超越する巨大な社会である"
この結合組織の原線維のネットワークが,どのように全身にわたって広がっているかを説明しています.

"細胞外マトリックス内部には,線維と原線維が連続的に身体全体に広がる多原線維ネットワークがあり,皮膚表面から骨膜まで,組織のすべてのレベルにわたっている"
このネットワークは,何十億の線維と原線維が多方向に相互接続して構成されます.これらの線維は織り交ざり,相互接続し,微小空胞と名づけられた三次元の微小立体をつくります.

"驚異的な像は,複雑に入り組んだ組織可動性を明らかにしてくれる.相互に結びついた原線維が形成する微小立体は,身体の三次元的性質を思い出させる.三次元における身体機能障害の複合パターンを完全に理解するとなると,徒手療法士は,組織可動性のあらゆる要素を調べることが不可欠となる"
徒手療法を実践するセラピストにとって,この本は,今まで見たことのない,そして考えてもいなかった概念に満たされた本と言えます.
この本を理解する一歩一歩が,セラピストの質を向上し,そして患者様の笑顔を引き出すことにつながります.
さらに,DVDも活用しながら,人体構造,空間配置および形態力学を理解することが,自分も患者様も幸せにしていきます.

本書は,じっくりと読んでいただきたい名著と言えます.是非,愛読書として長く読んでいただければ幸いです.

ページサンプル

著者インタビュー

『アナトミー・トレイン』の原著者:トーマス・W・マイヤース (Thomas W. Myers)によるコメント
Thomas W. Myersおそらく10年前だったと思うが,Jean-ClaudeGuimberteau医師が撮影した,身体で動き,生きた筋膜のユニークなイメージを最初に見たときは信じられなかった.何かしらのトリックや冗談に違いない,これが生体組織の現実であるはずがないと思った.

しかし,その信じがたいものが眼の前にあると,前提を根本的に変更することをせまられる.Guimberteau医師の映像を学んだ結果,私の考えは変わり,教える内容が変わり,30年間,マニュアルセラピーの診療で磨いてきた私のタッチも変化することを強要されることになった.

Guimberteau医師が「滑走システム」と呼ぶものの流動性と適応可能な性質を理解してから,私は線維性組織を「伸ばす」のをやめた.私は癒着をゆるめ,組織の健常な運動を促すよう,ずっと優しく,的確な面に沿って,タッチを用いることができるようになった.

構造を志向するセラピストは,帆船の索具を調整するかのように,力学的なロープ,ワイヤー,枠組みを引っ張ることはない.

Guimberteauの独創的な探索を踏まえると,我々が実際に変えようとしているのは,ムコ多糖類のゾル・ゲル状態,つまり間質液の「流れ」,神経の情報伝達,生きた組織の細胞外マトリックスにある力学的な力であることがわかる.表面を触ることは,深部をかき混ぜることである.

ヒトはどのように動くのか,さらに根本的に言えば,「何が動くのか」について根本的な再考のときに我々は置かれている.

我々は,身体運動が生物力学的に,熱力学的に,流体力学的に作用しなければならないことを知っている.身体運動が細胞的に作用しなければならないことを理解している.

我々は,胚で大量に増殖,分離し,子宮から「空気の世界」へ移動して最初の呼吸をする瞬間の短くも激しいショックを経験する.

それから,細胞外マトリックスが取り巻き,保護し,包んでいる70兆の活発な細胞としての成人が機能するようになる.

しかし,どのように機能するのだろうか?

軟膜から骨間膜まで,細胞外マトリックスを我々は本で見た.これは,硬く,乾燥したものである.死体でも,我々は細胞外マトリックスを見た.これは,伸びることなく,癒着したものである.未処置の死体でさえ,筋膜は受動的状態のままである.

Guimberteau医師とともに,生きた身体を旅すると,これまで不活性な組織が動的な生命となることに驚く.「露に濡れた線維の移動する付着部と泡立つ膜」という詩情に富んだ場面を見ると,身体がどのように運動を扱っているか,特に,いつ滑走するか,しないかに関して新しく理解できる.

どんな画像でも製作することの行為は,視界から何かを除外することで1つのものを照らすことである.もちろん,解剖で死体を解析する従来の方法は,非常に役立つものであった.しかし,この方法は間にあるものに関する知識をあいまいにしてしまった.「間にあるもの」こそまさしく,はっきりとした境界を持つ構造を示すために,メスを滑り込ませていた場所なのだ.

しかし,丈夫な構造の間にあるものは,まさに運動が生じる場所でもある.このことは,Guimberteauが単純だが,驚くべき現実を示すまで根本的に誤解されたままであった.

筋膜の連続性に関する着想は,かなり世界に広まっている.私自身が出版した書籍は,筋の機能的,安定化させる接続を描き,筋の織り目の方向に従い,壁側の筋膜をたどろうとしてきた.アナトミー・トレインと他のいくつかの身体の地図は,姿勢と運動の慢性障害に対すsる革新的戦略につながる予測を行い,大きな人工運動の小さい部分を解剖する還元的分析をやめさせ,システム全体にある相乗作用の特性を見ていく.

Jean-Claude Guimberteauの行ったことははるかに重大である.彼は「新しい」システム(系)に等しいものを発見した.これは,我々自身の細胞の住居が実際どのように,細胞を破壊せず,組織を裂かず,流れを妨げることなく運動の「断裂」に対処しているかに関するシステムであり,一度見ると明白となる.細胞間の破損は最も座りがちな人でも,1日100万回起こっているに違いないものである.

「神経の発火で筋が関節を横切り,骨を動かすが,靭帯によって制限される」モデルは,ヒトの形態と安定性を説明するものとして何世紀もの間,我々を満足させてきた.オステオパシー医,ロルファーなどは身体に広がる筋膜の網の概念に迎合してきた.

しかし,丈夫で識別できる結合組織構造を経由して,個々の筋が端から端まで作用することで生じる,てこと力の生体力学による治療効果を今でも説明している.

今,明らかなのは,この旧モデルは不適切であり,現在の限界を超えて進むために,生体力学は,個々の神経筋の作用において,テンセグリティー工学,流体におけるフラクタル幾何学,サイバネティックスの関与を考慮する必要がある.Guimberteauの探索が明らかにしたのは,身体全体にある液体,ゲル,線維による高度に適応可能なシステムである.

このシステムは適用される力に対してすぐに内部で反応し,可動領域の細胞へのダメージを緩和し,皮膚下の組織へ緊張を効率的に分布させる.

大腿動脈は大きな循環器系の一部であることは,我々は見ればよくわかる.同様に,腕神経叢は一つの構造と識別できるが,明らかに神経系全体の一部でもある.

しかし,生体力学の分野で働く我々は多くの場合,アキレス腱,半棘筋,または胸腰筋膜が独立した構造であるかのように施術を行う.

これらの構造が全身に効果を及ぼす第3のシステム,筋膜の網の内部に存在することを同じようには認識しない.筋膜の網は均一に動的で,血管や神経と同じくらい自己調節的である.

Guimberteauのイメージと研究を通じ,身体全体で連続した生体力学的反応が,これまでの考えよりはるかに流動的で,カオス的で,自己組織的なのがわかる.将来の世代は,これを「当たり前」と言い,我々の力学的な旧モデルを風変わりなものとして退け,Guimberteauの先駆的洞察を土台にしていくだろう.

これまでの常識が覆されることになるが,私は今の世代であることをうれしく思う.

Guimberteau医師が彼自身で確かめる旅から持ち帰った印象的で重要なイメージにより,ショックを受けて,恐縮し,喜び,そして変わることができるのだから.